歯周病
歯周病について
30歳以上の成人の約80%が歯周病
歯周病は古くから歯槽膿漏として知られていて、テレビコマーシャルなどでもこの病気の名前は耳になじみがあると思います。歯周病は糖尿病などと同じく日本人の5大生活習慣病のひとつです。
口腔衛生習慣の改善により、日本人の虫歯は減少してきました。しかし、歯周病はあまり減少することなく、現在でも30歳以上の成人の約80%が歯周病にかかっているとされ、歯の喪失原因の第1位になっています。
では歯周病とは一体どういう病気なのでしょうか。
歯周病ってどんな病気なの?
歯周病とは文字通り歯の周りの組織(歯茎や歯が植わっている骨など)が細菌により破壊され、溶かされてしまう病気です。多くの場合あまり痛みがないまま徐々に長い時間をかけて進行するので、かなり病状が進んでしまうまで気が付かない場合があります。なくなってしまった骨や歯茎はもとには戻らないので、そうなってしまわないように歯周病を予防することが大切です。まずは自分が今歯周病にかかっているのか、またどのくらい進行しているのかを知り適切な治療を受けましょう。
歯周病になっているかどうかのセルフチェックができますので、鏡を持ってお口の中をのぞいて見てください。
これらの項目にあてはまるものがあれば歯周病が進行している可能性が非常に高いので、歯科医院でレントゲン撮影や歯茎の検査を受けることをお勧めします。
歯周病で大切なこと
一生を自分の歯で健康に過ごすために
現在では歯周病は、予防でき、治療も可能です。大切なのはやはり予防、診断、治療、そしてメンテナンスです。
この15年の間に、歯周治療は急速な進歩を遂げました。以前は「不治の病」とさえ言われていた歯周病も、現在では進行を阻止することが可能となり、健康を取り戻すことができるのです。
まず、歯周病の原因は歯垢ですから、それを溜めない、増やさないことが基本です。そのためには、
- 正しい歯ブラシの使用を毎日実行することです。
歯の表面を歯垢のない清潔な状態にしておくことが何より大切なことです。 - 歯肉の中まで入っている歯石を完全に取り除き、
さらに根の表面を滑らかにして炎症を引き起こす細菌を徹底的に除去することです。 - 傷んだ歯肉、骨を治療して健康な歯肉に近い状態にすることです。
- 健康の保持のため歯科衛生士による専門的なクリーニングなどのメンテナンスを定期的に受けることです。
岩崎歯科クリニックでは、口腔内の環境を改善するためにお口の中の菌の数をコントロールするプログラム(THWP)もご用意しています。
ご興味のある方はこちらもぜひご覧ください。
末期になるまで痛みや腫れがなく、気づきにくい
歯周病の恐ろしい点は、初期・中期には痛みをあまり感じることがなく症状がどんどん進むことです。痛みや腫れの症状が出てくるのは末期になってからで、それまではほとんど自覚症状がありません。これがこの病気の最大の特徴で、また一番恐いところです。予防、診断、そして適切な治療により、歯周病から歯を守りましょう。
歯周病の原因
口内の細菌と歯石
お口の中にはおよそ400種類の細菌が住んでいます。
これらは普段あまり悪いことをしませんが、ブラッシングが十分でなかったり、砂糖を過剰に摂取すると細菌がネバネバした物質を作り出し、歯の表面にくっつきます。これを歯垢といいます。歯垢1mgの中には 10億個の細菌が住みついていると言われ、虫歯や歯周病を引き起こします。
その中で歯周病を引き起こす細菌はポルフィロモナス・ジンジバリス、プレボテーラ・インターメディア、アクチノバシラス・アクチノマイセテムコミタンスなど10種類以上がわかっています。また、歯垢は粘着性が強く、うがいをした程度では落ちません。この歯垢の中の細菌が歯肉に炎症を引き起こし、やがては歯を支えている骨を溶かすのです。
さらに、歯垢は取り除かなければ唾液中のカルシウムと結合し、歯石といわれる物質に変化します。歯石はいっそう強固に歯に付着します。その中や周りにさらに細菌が入り込み、毒素を出し続けるのです。これはもはやブラッシングなどでは取り除くことはできません。正しいブラッシングを身に付け、効果的に歯垢を取り除きましょう。
また、岩崎歯科クリニックでは、この菌の量をコントロールするTHWPという独自のプログラムもご用意しております。
進行させる因子
歯周病の治療
岩崎歯科クリニックの歯周病治療
歯周病は、主に歯肉が歯に接する付近に存在する歯垢中の細菌が原因で進行します。歯肉と歯の間にできたポケットといわれるスペースは歯周病が進行するにつれて深くなり、細菌の増殖する空間が増え、歯肉を腫らし骨を溶かし、やがては抜けてしまいます。
歯周病はその進行の程度により、いくつかの治療が適応されます。
基本治療
ポケットの深さを測定し、歯垢、歯石の除去を行います。(スケーリング&ルートプレーニング、ブラッシング)
この療法は、ほとんどの歯周病に対する基本的な治療です。
スケーリングとは歯の表面や根の表面の歯垢石を器械で取り除くことです。
ルートプレーニングとは根の表面がざらざらしたり、歯石で満たされていたり、毒素や微生物で汚染された表面を除去する方法です。
このことにより、歯周組織が改善され、ポケットの深さが浅く(2~3mm)維持されればメンテナンスに移行します。
外科治療
基本治療で一部ポケットの深さが改善されず、ポケット内で細菌が生息し、ブラッシングで除去できない状態や、歯周病の進行が進んでしまった状態に対して外科的にポケットの深さを減少させる手術があります。
また、特殊な材料を用いて部分的に失われた骨を再生させる手術を行う場合もあります。
手術はそれぞれの病態にあった方法が適応されます。ポケットが改善されれば、メンテナンスに移行します。
歯周病のメンテナンス
一度きりの治療だけでなく、日頃のメンテナンスが重要
歯周病の再発防止と健康の状態を維持していくために、定期的に検査と予防処置を行うことが必要です。歯周病のチェックと専門家による歯垢、歯石の除去などのクリーニングを行うことが何よりも重要です。
メンテナンス
メンテナンスとは、歯周病を再発させないように健康な状態を維持していくための定期的な治療のことです。治療が終了したあとは、3~4ヶ月ごとの定期健診の受診をお勧めします。
歯周病は主に口腔内の細菌が原因で発病する疾患です。したがって、この細菌を生涯除去し続けることが歯周病を予防し、お口の健康を維持するために必要となります。
細菌の集団である歯垢は、毎日の適切なブラッシングでほとんど除去することができますが、深い歯周ポケットの中や歯並びの悪いところにある細菌はブラッシングでは除去することが難しいので、これらは歯科衛生士による専門的なクリーニングによって除去しなければなりません。
歯周病は再発の多い病気と言われています。治療により症状が改善したとしても、そこは一度歯周病に侵されたところです。治ったといっても、溶けてしまった骨が元通りに戻っているわけでなく、歯と歯肉が弱い結合で治っているのにすぎないのです。ブラッシングが不十分であったり、メンテナンスを怠ると細菌が活動しはじめ歯周ポケットが深くなり容易に「再発」を起こします。
また、残念ながら治療の限界もあり、部分的に完治しないところが残ってしまうこともあるでしょう。そのような部位でもメンテナンスを継続することにより歯周ポケットがそれ以上深くならないように、「進行を食い止める」ことができるのです。
メンテナンス法
- 歯周精密件査(X線検査・歯周ポケットの測定・動揺度の検査)
- ブラッシングの再確認
- 噛み合わせのチェック
- 生活習慣指導
- トゥース・クリーニング
- 抗菌剤の塗布、フッ素塗布など
欧米では歯周病を「静かなる疾患」と呼びます。これは患者様自身が再発や進行を自覚することは困難であるということです。したがって歯を失わないためにも、トラブルを感じなくとも定期的に歯科医院でメンテナンスを受けることが必要なのです。
ブラッシング
「歯周病の始まる場所=プラークの残る場所=毛先のあたりにくいところ」になります。
歯ブラシの毛先があたっていなければ、プラークは取れません。自分では磨いているつもりなのに磨けていない人のほとんどは、磨きたいところに毛先をあてられていないためなのです。
磨く場所
- 歯と歯の間
- 歯と歯肉の境目
- 歯ブラシの頭が届きにくい所(奥歯)
磨き方のポイント
1.歯ブラシの毛先
毛先を磨く場所に確実にあてましょう。
2.動かし方について
小さく横にでも、縦にかき出すようにしても、円を描くようにしても、良いと思います。肝心なのは、歯と歯肉を傷付けることなくプラークを落とすことです。
3.軽く磨くようにしましょう。
力を入れて磨くと歯ブラシの毛先が開いてしまいプラーク(歯垢)が落とせません。さらには、歯や歯肉を痛めてしまいます。力の目安は、毛束がまっすぐなまま歯面にあたる程度で良いのです。
4.細かく動かしましょう
毛先を使って磨く方法がプラークの除去には効果的です。ついつい大きく動かしがちですが、歯には凸凹があるため小刻みに動かさないと、引っ込んだところには毛先が届きません。特に、裏側や歯と歯の間を磨くときは、大きく動かすとせっかく入った毛先が出てしまいますので注意してください。
5.1ヶ所につき10~20回ぐらい磨きましょう
プラークは粘着性が高いため、2~3回歯ブラシを動かした程度では落としきれません。1日に最低1度は、時間(5分以上)をかけてゆっくりと隅々の歯垢を取り除いてください。可能であれば、毎食後磨くことが理想です。とくに、寝る前に丁寧にゆっくりと磨くことが効果的です。
自己流で磨いていては歯垢(細菌)は落とせません。必ず専門科(歯科医師、歯科衛生士)によるブラッシング指導を受けるべきです。
虫歯治療 Q&A
Q:歯がしみるのですが虫歯でしょうか?
A:歯がしみる原因には、虫歯と知覚過敏が考えられます。虫歯ができて歯に穴が開くと、そこから神経に刺激が行くようになりしみるようになります。また、知覚過敏は歯周病などによって歯茎が下がり、歯の根が露出すると歯の神経が外に近くなり、その結果歯がしみるようになります。虫歯も知覚過敏も早期発見が非常に大事です。
Q:親知らずは抜いたほうがいいですか?
A:まっすぐ生えていて、上下ともきれいに噛み合った親知らずはそのままでも良いと思います。ただし、現代のほとんどの方は顎が小さいために、斜めに生えたり、顎の中に埋まったままなどといったケースが多いようです。将来、親知らずが原因で虫歯や歯周病が進行することも多いので、できれば骨が軟らかく抜歯がしやすい、若いうちに抜いておいた方がいいと思います。